せんちめんたる・ふーる/凛々椿
 
と聴いていた
ずっと遠くの東京の雨が泣くのを
いつまでも聴いていた

やがて空が明るくなって
雨も泣き止んで
いつもの一日を投げ出したい気持ちばかりで
庭に出ると
枯れ葉がはらはらと降っていた
あの笑顔の人がきっと好きだった季節だ
彼が二度と見ることの出来ない季節だ
時計を見た
07時36分になっていた

「ワルター?あいつは、センチメンタル・フールだ。」
なぜかこの言葉が降り注いで消えなかった
まるで昨日の雨のように
ずっと降り注いで止むことはなかった
「ワルター?あいつは、センチメンタル・フールだ。」
「ワルター?あいつは、センチメンタル・フールだ。」
空の先を見つめる彼の言葉は
まだ静かに呼吸している





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