白い夏/前田ふむふむ
病棟のイスが、
あてがわれる。
止まっているイス。
そのイスに、マスクをした白い肖像のような店員が、
マニュアル通りの注文を取りつづける。
「あなたの苦しみや憂鬱を消してくれる、
コーヒーは、いかがですか。」
果てしなく続けられる救済。
積み上げられる錠剤の山脈。
若い声の肢体に、ひとりひとり消印を押していく。
白い肖像が、わたしに声をかける。
「ご注文のコーヒーは、
自宅の鍵を掛けた部屋にお届けしますか。」
「いいえ、わたしは、家族と流通が良いので、
ここで頂こうと思います。」
「コーヒーは、副作用に注意して下さい
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