コピー機/s
うなってくると負けてはいられないと
私は悲しみのレイアウトや構成を考え始め
悲しみがより悲しみを増して見えるように
演出を加えてよりリアリティを高めて印刷した
これが心地良かったらしく私はもう病み付きになり
何十枚もの悲しみを綴じた冊子を作って
表紙をつけて 挿絵までつけて 目次をつくって
ページを振って あとがきまでつけて 配布した
知人からの反響はよろしく あと何十部もの増刷を頼まれた
こうなってくると私は俄然意欲を見せて
もう何十ページか分の悲しみを新たに増やすことを決定した
そのため私は新たな悲しみを求めて
日々悲しみ彷徨っていたのではあるが
その一方で不思議な幸福感を覚えるようになっていった
新たに出来上がった私の悲しみ増刷冊子を手にした人々は口々に
なんてあなたは悲しかったのだろう などと涙ながらに唱えたが
もうその頃には 私の悲しみなどはすっかりと消えうせてしまっていて
コピー機がパンクしていたのであった
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