脈/本木はじめ
 
「あー、腹痛かぁ」

と言いながら休憩室に入ると君がいた

「からだの調子の悪かときって、脈の速うなるとよ」

君がそう言うので
僕は脈を計る
手首の付け根をさまよう指
(見つからない)

「かしてん」

そう言うと
僕の左手首をとって
今度は君のさまよう指
(見つかった?)

「なか」

「なかわけなかやん!」

「あっ、あったあった」

君は少し微笑んで
首を傾げながら、

「普通?」

「普通?いや、聞かれてもねぇ」

そんな僕と笑ってごまかす君

その日から
僕の計る脈が
ひとつ増えたりした
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