ものがたり/九鬼ゑ女
 
躊躇いのプロローグ     /ためらい
鳴り響いて宿命        /さだめ
ときめいてフォルテ

くちうつし の ものがたり

うつろいのエピソード
爪弾きて一瞬
凍てついてアンダンテ

まちぼうけ の ものがたり

退廃のエピローグ   
くちずさむはあの過去     /あのひ
錆びついてピアニッシモ

なまごろし の ものがたり

文盲の娼婦に
明日は映らず
聾桟敷にされたこどもに
今日は告げられず
青息吐息で 
場面は ものがたりの中に
置き去りにされたままで

時が息絶えるのを
「主人公」は初めて 見たのだろう

感嘆符 の ものがたり

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