青の王国/日向夕美
 
潮音、拡やかな幸福
海の縁に腰かけていた
中埠頭は青くあり
ごうごうと鳴るごとに
背骨のきしむような気がして
足首をさらう水音で紛らせている


波間に叫ぶようなことばを
持ち合わせてはいない
甘く柔らかな舌は
飛沫との混濁に置いてきたの
群青のぬくみが喉笛に達するとき
首を持ち上げるは逆立ちの眼
じくじくと潮が浸みる
塵芥/とプラスティック片の半透明/海鳥に還る様を/それはとても/広大な円を/えがく/えがいて/渦巻い/て/瞼を閉じる/許して呉れます、か


海の果てには
幸福が在りますか
静止し口許のほころび
指先で繕いながら水音をきく
ならばここが
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