暖かい黒水晶/
蒸発王
きます
黒い眠りの粒子が
土の香りと混じると
ぐっと強くなった
眠りの匂いが
とりまいて
夫は
最初で最後の眠りに落ちる
刹那
私を見て
微笑いました
流れ出た黒水晶は
墨汁のように私たちの体を染め上げて
香り立つ秋と涙の匂いに
私は
ただ溜息をついて
この黒水晶が
ゆったりと温度を失うまで
抱きしめたままでいたのです
『暖かい黒水晶』
戻る
編
削
Point
(3)