空き缶/虹村 凌
を笑う奴が豆腐にぶつかって死んだんだ
ジョナサン!
気違い扱いされた夜がいつの事か思い出せないよ
ジョナサン!
昨日に何が見える?昨日に何が出来る?
ジョナサン!
国民年金で見栄も吹っ飛んでしまったよ
ジョナサン!
無知と偏見で何人殺してしまっただろう?
ジョナサン!
ジョナサン!
ジョナサン!
街を埋め尽くす勢いで膨れ上がる邪な愛の夢に耐え切れず
この浜辺に来たはいいけれど
結局は羨んで空き缶を投げる
群れていた雲は少しやつれて
背中に激しくぶつかる太陽が怖くなる
ジョナサン
偉そうな詩人の言葉がいつも絶対じゃないと言うけれど
ジョナサン
真冬の夜中を握り締めて
何か別の答えを見つけるよ
誰の声も届かない
何か別の答えを見つけるよ
放り投げた空き缶が溺れたみたいに沈んでいく
溺れているのは余計な物の海だろうか
遠くで誰も乗らない電車が通り過ぎる
灰色の夜明けの前を
ただ黙って歩き抜ける
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