空き缶/虹村 凌
だろうけど
無責任が止まったら詩人なんてやってらんねぇ」
煙草に火をつけずにまっすぐに目を見てこう言ったんだ
浜風が強い日はジョナサンは煙草に火をつけない
煙草の煙は風になびいて
後ろに過ぎ去ってしまうから
「後戻りなんてありえねぇよ
どこかの民族じゃ背後に未来があって
目の前は過去らしいけどさ」
フィルターは噛まれて折れ曲がっている
それでもジョナサンは煙草に火をつけない
「俺達の声はこの浜風にかき消されても
間違っちゃいないんだぜ」
ジョナサンは壊れたライターを海に向かって投げた
誰もがポケットの中に安心を隠し持っているから
爆弾が落っこちた時でも天使達は
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