ある日/んなこたーない
人間はたいがいのものがなくても生きてゆける。屋根でさえ贅沢品である。
いる/いらない、という判断基準はあまりに曖昧にすぎる。
下着や靴下の類の捨て時を見極めるのは難しい。
DVDやCD-Rを処分する方法が分からない。
レコードのジャケットは、ときとして鋭利な凶器になる。
本やCDについている帯は日本独特の文化らしいが、まったくの不要物である。
自分で買った記憶はないのに、日に日にハンガーはたまってゆく。
もうつけないであろう香水は、中身が入ったままでは処分できないし、
かといって、使用する以外に中身を減らすすべがない。
ギターは一本もあれば充分だ。
ネクタイは五本まで許しておこう。
クローゼットに押し込んである、こまごまとした思い出の品は、もういらない、いらない。
結婚でもして、妻が専業主婦になったら、こんな煩わしさから多少は解放されるのかもしれない。
しかし、いらなくなった女房を処分する気苦労を思えば、それもまた考えものである。
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