小椋佳 「野ざらしの駐車場」を聴きながらの秋の夜に/九鬼ゑ女
ものを叩きのめそうと待ち構える人間にだけはなりたくない。
そう思っているそばから、わたしの足元が崩れ落ちそうになるので
そこに頑丈な石を埋めてもらおうと、
思いきって、猫なで声で通りすがりの運命に擦り寄ってみる。
ねえ・・・こんなことっていつまで続くのかしらねって
ため息混じりに嘆くそばから、
そのお方は片手をあたしの前にすっと差し出すので・・・
「一体その石はおいくら?」
と、あたしは少ししらけながら聞いてみる。
「お気持ちで結構です」
そう云われつつ所詮世の中はどこまでも、
「言い値」が罷り通るようになっているらしい。
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