幸福の外皮/
 
鎌首を屹立させている。

皿の上に、
ぬぐい残されたピノノワールがある。
それをバゲットでぬぐい、口に運ぶ。

ブリヤ・サヴァランの言質を引けば、
「この世界のあらゆる楽しみを増幅させるものが食事だ。


 そうして、この世界のあらゆる楽しみが消え去った後、
 唯一心を慰めるもの。それが食事だ」
という言葉がある。

ああ神様。
今夜の子羊の肉は、今夜のパンは、今夜のソースは、あまりにおいしい。
おいしすぎて、自分の醜さを忘れてしまうほどだ。
慰められるべき心自体を、忘れてしまうほどだ。

ブリヤ・サヴァランの言質の間には、
きっとひとつの、省略された空隙が
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