コロッケの日/ポッケ
う少し、え?なに
ねえ、遺書かいといてね
まだ元気だよ
だからだよ
遺書なんて、なんにも残すものないよ
遺産じゃないよ、手紙だよ
ちゃんと、さようならの
手紙だよ
大きな病気にかかってるわけじゃない
あした交通事故にあうみたいな
嫌な予感がするわけじゃない
けどコロッケを丸めてたら
最後の思い出が今だったとしたら
だとしたら、どうしようって
あなたは勝手にころさないでっていうかもしれない
でも
二人でせまい台所にいるからって
湯気が立ってお茶碗がそろっているからって
明日が同じように来る約束はどこにも無くて
突然の喪失が来ない約束はもっと無くて
同じような明日が来たら
変わらず減らず口を叩くのだけど
二人でコロッケを作ったことと
あなたが鼻歌をうたったこと
明日が変わらず来ても
決して忘れない
同じようにコロッケを作る日があっても
恐れと安らぎのなかでコロッケを丸めた今日をわたしは
忘れてはいけない
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