?時間の扉?/九鬼ゑ女
「待っててね」
って、そう言われたあたしは
・・・待ってるわ
心の中でそう答えながら
じっと長いこと此処で佇んでいた
何処から現れたのか
黒猫がね
足元に擦り擦りしながら
あたしに愛をねだりにきたわ
あたしはポシェットから鍵束を取り出して
猫に見せたの
「ねえ、どれがいい」って言う風にね
猫はなあんだっていう風に
半分呆れ顔で、それでも
真ん中の一番古そうな錆び付いた鍵を指差した
そして
長い舌でぺろりと嘗め回してから
自分の人生には必要ないからって
ぷいと何処かに行ってしまったの
確かにお魚の臭いも味もしなかったけど
よく見ると、真ん中
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