屋上映画/ゆうと
屋上では映画がひっきりなしに流れている
でも誰もいない
わたしひとりしかいない
屋上から見る景色の半分は空で
誰かが火をつけたみたいに
スクリーンは赤く燃え上がる
こつり、と靴の音がして
わたしは振り向くと
そこにはあの日の君がいた
君は真顔でわたしを見ている
わたしは少し笑ってみせた
すると突然雨が降り出し
わたしの目からも涙がこぼれた
それはどしゃぶりの雨で
服はびしょぬれになり
顔もぐしゃぐしゃになった
でも君だけはなぜか雨に濡れずに
まだそこに立っていた
君は何も言わない
わたしは何か言おうと思ったけど
言葉が見つからなく
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