読書と恋愛/楢山孝介
下の句を続けるとどうしても
未練がましい言葉が出てきそうなので
それだけ書いて送信ボタンを押した
あの時書いた百枚の冒頭に
「君に捧ぐ」と献辞を入れておけば
結局は別れることにはなっても
もう十枚くらいは読んでくれたかもしれない
僕と君に似せたアルフとセシリーの恋愛シーンに
君は感激してくれたかもしれない
もう君が読んでくれることはないだろうけど
あれから続編を三作書いたんだ
出てくる女性はどれもこれも君に似ている
主役である色男の名探偵は
どうしても僕に似てくれない
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