海賊/狸亭
 
送電線に区切られて左手に冨士山
右手に大山丹沢山蛭ケ岳などの丹沢山塊。

ああここはニッポンだ。
年金収入の範囲で支えられた自由
長い間ほんとうに長い間求めていた自由とは。

(コンナ些細ナ時間ヲ持ツコトダツタノダロウカ)

朝、アポリネールが首を切った太陽が
夕べ、 海に交わる時
ランボーは永遠を見た。

だがオレは今
湿ったニッポンの
変哲もない夕日をなんと表現しよう。

ペール・ラシェーズの墓地の高台から
セーヌの両岸に身を捩るパリを眺めて
「金銭と快楽」という怪物に対決するラスチニヤック。

ふるぼけた夕日に向って
白髪まじりの髪を風に吹かれて
男はひとり海賊を夢見て沈黙する。



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