白い壁沿いを歩く日/水町綜助
 
く 

 いま歩いて
 一人で
 僕は
 高円寺から阿佐ヶ谷へ
 歩いて
 歩いていくとき
 すれ違う誰かも
 誰だかも
 もうどうでもよくないか
 僕が君とか言ってしまう君が
 通り過ぎていったとしても
 こんなに晴れて
 それで九月のしっぽにつかまっていても
 まだまぶしいんだ
 顔も分からないよ 

 だから
 こんな駅の
 北口に建っている
 ふた抱えくらいの
 四角い柱で
 その一本の柱だけで
 僕たちは
 僕を僕たらしめる君をみ失うし
 同じように君もみ失うんだよ
 いつまでも
 ほんとうに
 そぐわなければ
 そんな簡単な
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