蝉殻/フクロネヅミ
 
かき分け、
蚊に刺され、崖を落ち

満足するまで探しました。
蝉殻を潰れるくらい両手に抱えて



"ただいま。"

いい顔してるわ
と、後頭部に蝉をつけた母が言いました。

其れを見て、
ああなりたくない
とだけ思いました。


台所へ行き、冷蔵庫を開け。


それは夏のことでした。

中身を全部ぶちまけて、
密閉されたいと呟きながら、
期限間近なソースの上で
私は感傷に浸るのでした。
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