月曜日の住人たち/結城 森士
 

カーテンも開けると
何もかも嘘のように思えた
夜空には静かに月が浮いていた
大きく息を吐き出して寝返りを打つ
さっきよりは落ち着いたのかもしれない

「月曜日が過ぎ去って久しいですね」
呪文のような意味の無い言葉を
何度も口の中で反芻していると
数人がカーテンの隙間を潜って
部屋に入ってきたのが分かった
「月曜日、が過ぎ去って久しいですね」
「ところで」
「明かりは消さなくて良いのですか」
「或いは」
「水曜日、八丁堀に」
「行けば分かります」
「触れてはいけない」
「ピンと張ったこの繊細な糸に」
「ところで」
「明かりは消さなくて良いのですか」
「絶対に触れてはいけない」
「或いは」
「明かりは消さなくて良いのですか」
「言葉になっていない」
「まるで言葉になっていないこの思考に」
…遠くから女の咽ぶ声が聞こえていた
「明かり…が怖い、消して…。…あれは…光ではない」
「絶対に触れてはいけない」

ところで
夢から目覚めることが出来ないまま
月曜日が過ぎ去って久しいのですが
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