オクノホソミチ 〜KAZANAGI風味〜/Rin.
限り、とてもじゃないけれど足りるはずがない。私はおそるおそる横目で右を見た。なんとか1枚で間に合っているようだ。その使用済みのティッシュ、どうするのかな?私はまた変な好奇心にかられ、おじさんから目が離せなくなった。彼のティッシュを持った手は、落ち着かない様子だったが、私の方をちらっと見ると、そそくさとそれをポケットにしまいこんだ。灰皿などに押し込まなかったのは素晴らしいことだが、私は、その背広を洗濯するクリ−ニング屋さんのことを考えて少し同情をした。
通路を挟んで3列ほど前に、ハルカとユウコの背中が見える。椅子を180度回転させて、ユカリとカヨがこちらを向いて座っている。彼女達の声はとてつもな
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