水の庭園。/クスリ。
/透明すぎる水の色/
/水の余韻が鳴り響く/
/月の仄かを呼吸する/
/その庭園を微かに揺らすのは/
/水だ/
月を宿す王立庭園の門扉に凭れている年老いた兵士は濃淡の物性を放ち、月に眠る。
掠れ湿る老兵の寝息を左に過ぎ、カツカツ、ゆっくり、と、足音を唐紅の煉瓦道に積み上げて影を追う。
宵に緑紅を艶やかに主張したラフレシアは月に硬質の鞭光に隷従し夜を冷たく停滞させていた。
蛍のような月蒼を連れて歩く僕の影は、ロートレックの描いたダビエ=ド=セレーランの様に、透ける虚構の感情だけが内包する哀しみを纏い、水の庭へ向かう。
「トゥールーズ=ロートレック卿の奔放
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)