螺旋/ワタナベ
 
どんと舞い上がり
はるか頭上で渦をまく
見とれながらぼくは
もうひとつの懐かしい家に

ぼくは還ってゆく
くれないに燃え、骨になり、芽吹く
渦をまいたたんぽぽの綿毛のように
螺旋を描き、遠ざかる八月を
まぶしく見送りながら

あの夏にこしらえたぼくの秘密基地には
今でもぼくの骨が埋まっている
たくさんの便箋が隅に重ねられて
伝えられなかった言葉が
あたらしい八月がくるのを
しづかに待っている


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