ぬるい祈り/灯兎
 
喰い殺された友は 満たされた欲情を纏って 死ぬことができたのだろうか
いや 永遠に近づいたのは彼ではないのか

毒地を過ぎ去る度に 知恵と貞淑を捨てては生き延びている
小さな囁きが刻んだメロディは 海に沈む貝にさえ 強く響いて
この地に赤い光が届くことなどは無いのだろうな
では俺が目指すのは何だと言われるのか
それを唯一知っていたのは 高音塊の風だけ

ならばせめて この行き詰った世界で祈りを捧げよう
誰のためでもなく 何のためでもなく 誰にも向けずに
赤と青の光でここが満ち溢れるように

ああ それさえも許されないんだったか
神なら 昨日殺してきたから


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