花埋み(石)/宮市菜央
美しい石を拾い上げては胸に抱えて歩き続けた、まるで今が盛りの花束を抱えるように。そして抱え切れなくなってぽろぽろと石がこぼれ落ちはじめると、それを一度に足元に落とし、また拾い上げて、ひとつひとつ川面へ投げた。非力なあたしの腕から放たれる石は、ぼちょん、と実に間抜けな音を立てて川底へ沈んでいった。ついこの瞬間まであたしの手の中にあったのに、今はもう二度と拾い上げられない石。あたしの手を離れ、冷たい水の底で、永遠に流れに洗われ続けるあたしの石。清らかな水の中で、もっともっと美しく磨かれるといい。あたしはいったいいくつ石を投げたのだったか。これからじっとそこにあって、時に激流に押し流され、いつかどこかへ辿り着く、あたしの永遠の石。
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