循環する夏のぷろぺら/佐野権太
後退する夏の左腕をつかまえて
さみしがる頚動脈にあてがい
しずかな熱をからめる
満たされては退いてゆく
寝息の揺りかご
いちばん弱い部分は
あずけたままで
届かないエアメールの
滞空時間に寄り添えば
寝台ごと
ふうわり昇ってゆく
とても
とてもうすく
広がってしまうから
すくって
なんどもすくって
尾ひれからじょうずに
わかってる
わかっているの
ぷろぺらが
うまくいかないから
ああ、ぜんぶ
ひらがなになってしまう
ねえ
つぼみをひらいて
ひらかないで
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