少女と石槍/楢山孝介
若者になったカルムは
戦好きの若き指導者になり
周辺部族を制圧していった
セツはそれをよく輔佐した
ヨクは日々積み重ねられていく敵の死骸を
泣きながら埋葬し、焼き、時に食べた
セツはいつかの意趣返しに
カルムが頂点を極めた時
後ろから刺し殺してやろうと目論んでいたが
流れ矢に当たってあっさり死んでしまった
ヨクはいつもより多くの涙を流しながら
最愛の友の亡骸を食べた
カルムは何千人と殺してもなお
森の小川の前にいて
(あれを殺すのか)
とためらい
石槍を捨てたくてたまらなくなる夢を見る
時にはセツの背中を石槍が貫く
けれども少女は
決してカルムの手を取ってはくれない
時に石槍に貫かれたのはカルム自身で
セツと手を取って去っていく少女を
切ない気持ちで眺めていることもある
セツに切り取られた首だけの姿で
こちらに歩いてくるヨクを見つめていることもある
ヨクは少女の首を運んだ日以来
一度も見せたことのなかった
満面の笑みを浮かべてカルムに近付いてくる
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