少女と石槍/楢山孝介
カルムは眼を疑った
森の小川で水を汲む少女の姿は
自分たちの部族の女と変わらぬ人間に見えた
いや、より美しく見えた
乳房を隠すように上半身に布を巻いていたが
そこにまた魅力を感じた
(あれを殺すのか)
カルムは石槍を投げ捨てたくなった
同族の仲間を殺して
少女と一緒に逃げ出したくなった
村を出る前
長(おさ)は十五歳になる若者三人
カルムとセツとヨクを集めてこう言った
「敵対する部族の一人を殺してこい
殺したものを一の手柄
首を切ったものを二の手柄
首を持ち帰ったものを三の手柄とする
一生その地位はついて回る
見事成し遂げたなら
結婚
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