孤独なビール/新守山ダダマ
 
部屋で一人飲むビールは、まずい
いや、まずいと言ったら極端だがあまりおいしくない
ビールの真のおいしさとは
仕事の後の解放感とか何かをやり遂げた時の達成感とか
野外でスポーツやライヴを観る楽しさとか
他人との語らいの楽しさから来るものではないか
実際、ビール自体はそんなにおいしい飲み物ではないと思う
初めの一口、二口がおいしくても後は苦いだけだ
それでも自分が居酒屋でもライヴハウスでもビールを何杯も注文するのは
何かの魔法なんじゃないかと思う
幸せなシチュエーションという付加価値がビールのおいしさなのか
それともビールが幸せなシチュエーションの付加価値としてしか成り立たないのか
よくわからないけど今夜がつまらないことだけは確かだ
淋しんぼうの俺は当たり前のように悲しい
そしてこのビールもきっと悲しいのだ
「なあ、もっと幸せになってくれよ」
缶の中のはじける泡がそう言っている
いや、もうはじける元気もなくてビールは本当にまずくなっていく
ごめんよ、俺もっと楽しまないと
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