がんばれない/なつ
考はすでに、病んで螺旋を描く百舌鳥だった。
もうすぐ夏休みも終わりだ。墜落の瞬間に
必要な羽ばたきは、果たして学校で学べた
のだろうか?私を取り巻いて掴んで締め付
けて放そうとしない、百枚の舌。夏の終わ
りを告げて止まない、百匹の蝉。うるさい
と睨みつけると、今度は音を閉じ込め、世
界に伸ばした付箋に貼りつく灰色の、夏。
早く走らなければ、秋に間に合わない。
じんわりと、脇の下から染み出る汗をぬぐ
う。ぬぐう。ぬぐう。ぬぐう。ぬぐう。ぬ
ぐう。ぬぐえばぬぐうほど灰色だ。良く似
ている。その灰色は、私に良く馴染んだ、
暑くて繰り返す季節の、暇を持て余した午
後に生まれる螺旋のような病んだ思考に良
く似ている。その思考の渦に落ちたなら、
私には翼が無いからきっと危ない。いや単
なる可能性ではなく、もう確信している。
私は、もう、がんばれないんだ。
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