くちなし/虹村 凌
 
立つ

綿埃のワルツを眺めて過ごす
誰かの声が聞こえる
朝を迎えた誰かの声

黒く傷んだ林檎の誘惑
透明な湯船に浮かぶ水蜜桃
茶色い吸殻の匂い
黄ばんだ何枚かの原稿用紙
破れた青いコンドーム
灰色のノイズが写るテレビ画面
ドロップが散らばった机の上

真っ暗な部屋の中に後光の様に差し込む虹
壊れない夜を通り越して訪れた
狂わない朝の大通りの向こうから
後光の様に差し込む虹が

あぁ伝えなきゃ
もう少したったら
壊れない夜も
狂わない朝も
いらなくなる事を

梔子の花が花瓶に刺されたまま
あなたと綿埃のワルツに包まれているのさ
梔子の花が一輪だけ刺さったまま
真っ白いあなたと綿埃のワルツに包まれているのさ
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