うなり/わら
 
夏の終わり

りんりんと鳴く虫の音の響く夜の淵

なまあたたかいぬめり気が
頬をなでる



セックスを終えてアパートを出た後の
このにおい

夏のにおい、のような
記憶のかたすみ


痛くなってくことばかりがふえて
こころを掻きむしりたくなるのだけれど

鈍感になっていくのは性器で


忘れたふりをするのが
精いっぱいなんだよ

汗ばむ体に
たましいはとり残されたみたいになってる

立ち止まって、見上げてみても
真っ暗は真っ暗のままだ


どこからか
カレーをつくる匂いがしてきたよう

遠くのほうで
電車のうなる音が聞こえる
[次のページ]
戻る   Point(26)