うなり/わら
夏の終わり
りんりんと鳴く虫の音の響く夜の淵
なまあたたかいぬめり気が
頬をなでる
セックスを終えてアパートを出た後の
このにおい
夏のにおい、のような
記憶のかたすみ
痛くなってくことばかりがふえて
こころを掻きむしりたくなるのだけれど
鈍感になっていくのは性器で
忘れたふりをするのが
精いっぱいなんだよ
汗ばむ体に
たましいはとり残されたみたいになってる
立ち止まって、見上げてみても
真っ暗は真っ暗のままだ
どこからか
カレーをつくる匂いがしてきたよう
遠くのほうで
電車のうなる音が聞こえる
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