許さない/悠詩
れない
赤信号にあいつが止まる
ぴしゃりと張った傀儡(くぐつ)の糸が
肩を手首を膝を突き刺す
なんの用事もないくせに
血だらけの足を地面に下ろし
忘れ物に気づいたふりして
路の時間を稼いでみたり
決して気づかれないように
決して気づかれないように
通り過ぎてく女子学生
からかう声は上げないでくれ
いつか俺らが大人になって
互いに互いを許せるように
なろうと決心した春の夜半
無謀なことを思ったもんだ
人を許すというおこないが
大人になった証拠というなら
俺は絶対許しはしない
青臭く弱い子供の俺を
鋼で造った傀儡(くぐつ)の糸で
いついつまでもどこまでも
引き摺り回していってやる
傲慢だけの許しはいらない
蒙昧だけの許しはいらない
従順だけの許しはいらない
忘却だけの許しはいらない
俺は絶対許さない
影を縛り続けたあいつ
それを許すと定義させた
世界と俺を許さない
あいつの隣に自転車並べ
「こん畜生が」と笑い飛ばして
「二度とすんな」と走り去るまで
俺は絶対許さない
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