八月十五日の長崎/ゆうさく
どうやら
夏のまどろみが
この街を
巡回している
チンチン電車(注:長崎の路面電車)
おばあさん同士の
席の駆け引きが
何か切なくなる
降りてみて、
上を見上げたら、そら
もうすこしで
ペルセウス何とかの襲来
そりゃ昨日
まあいいや、
上を見上げたら、そら
花火がひゅんっ、と
宙をまって
偽りの平和を彩ったりする
すごく蒸し暑かったから
揺れる街で
そらを泳いでみたりした
生ぬるい風だけは
「しょうがなかった」
どーいどい、と
精霊流し(注:長崎の、お盆の伝統行事。この一年亡くなった人の霊を精霊船という手作りの船に乗せて「西方浄土」に送る。「どーいどい」という掛け声を言って、爆竹を鳴らしながら、船を西方浄土へ送る。)
爆竹の音
虫よけスプレー
かすかに、
風鈴、りん
夏の轟きが、
坂道(注:オランダ坂)に跳ね返って、
消えていって
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