符号の無い夢/松本 卓也
 
白黒に濁った空
息の詰まる空気
突然の大雨に駆け出す
いつもの通勤路

コンビニで雨宿り
パンとビールで時間潰し
持ってもいない自転車が
盗まれた事が告げられる

感情の乏しい叫び
水の少ない川でなく
人の気配の無いビルが
いつの間にか聳えている

小雨の中駆け出して
辿りついた先では
まるで高校の教室のように
机を並べて配られる答案

適当な回答を埋めたのか
ただぼんやりと佇んでいたのか
どうしていたのかは分らないけど
昔眺めていた笑顔があった気がする

手渡されたメモリカード
起動しなくなったパソコン
中にはピカソの伝言とやらがあり
ご家族に渡さなければいけないんだと

聞き分けの無い後輩に
お互いの呼び名を確認しながら
無意味な可能性を探る内に
視界が遠ざかっていく

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