「 へびかゑる。 」/PULL.
 
は夕べ徹夜で荷造りをしていた。
あたしはうるさくて寝付けなかった。

音痴の蛇は今、
巻き付いたあたしの肩で、
ぐうぐうと寝息を立てている。

のんきな蛇だ。

あたしは、
蛇の尖った鼻先を、
ぴんっと指先で弾いてやった。
蛇は、
どさりと落ちて、
地面の上でとぐろを巻いた。
赤くなった鼻先を尻尾で撫でながら、
蛇が涙目で文句を言う。
あたしは聞こえないふりをして、
言ってやる。

「道案内のあんたが寝てたら、
 道に迷っちゃうでしょ。
 そしたらあたし、
 この森で、
 食べ物がなくなってひもじくなって、
 身近なタンパク源の、
 あんたを食べ
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