夜半過ぎ/松本 卓也
碌に街灯も無い坂道
心も体も疲れ果てた
無気力な家路の果て
残飯を漁る野良猫の
縄張りに知らぬ間に踏み込み
精一杯の威嚇が向けられる
僕は苦笑だけを浮かべ
心の中そっと呟いた
蒸し暑い部屋に踏み込んで
明りを灯すより先に
冷房のスイッチを入れる
蛇口を捻れば温水が流れ
何一つ癒すものなどありはしない
独り身の人生とは
斯くも報われぬもの
求めていた生き様のほんの十分の一も
叶えることが出来ずにいるほど
平々凡々な一日が続いていく
最近は晩酌無しで眠れないし
部屋明りを失くしたら夢よりも前に
想像の外にある終焉の先に怯えるだけ
い
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