雨細工の町/望月 ゆき
見るとそれはみな
さっきの少女が持っていた
ぷよぷよした玉で出来ていた
糸でつながれてもなお
その玉はぷるんぷるんと弾んでいる
屋台の看板を見ると
「雨細工」と書かれていた
どれくらい歩いたか
雨粒は相変わらず降っていて
気がつくと
服はすっかり濡れていたけれど
それも気にならなくなっていた
時折 虹がかかるけれど
光の源は わからなかった
そこから抜け出るすべは
なんとなく知っていた
水溜りを探せばよいのだ
長靴の右足を入れればよいのだろう
もはや そこがどこかなんてことは
どうでもよくなっていた。
とりあえず、とつぶやくと
方向転換して
さっきの「雨細工」の屋台に向かって
雨の舗道を戻ることにした
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