平凡な旋律/松本 卓也
 
頭だけ冴えていく割に
心はいつも遠くに飛んでいく

月が淡く白く囁きかけて
一滴の哀れみを投げかけてくる
ただ遠く平行に交錯していく
歩道橋を通り過ぎる雰囲気に
相応しい言葉を探してみた

ただ何となく泣いているようで
ただ意味も知らず笑いかけるようで
自嘲か幸福かさえ判別がつかないまでも

埃が纏う夢が一片
目の前で弾け飛んでいく
今日誰の生き様が曲がったのか
知る術は無いのだけど

見送る視線の先で
明日が幸福であるようにと
願う祈りが有ってもいいじゃないか

笑顔が濯いだ昼間の屈辱
約束した覚えの無い温もり
そこかしこで儚く現れ静かに消えて

一日分並んだ言い訳をひと摘み
空に放ってみたならば
弦楽器を爪弾くように
寂しげな音楽を奏でるだけで

街に生まれた哀しみを一つ
ポケットに詰め込んでみようか
誰も詠わない平凡な夜の旋律を
夜空の譜面に書き落としていたい
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