空飛び死人/なかがわひろか
お墓の中へ入った
あの体を抜け出して本当によかった
ずっとあの中にいるかと思うとうんざりした
一通り見終えると
私はまた町中を飛び回った
また何人かの人と目が合った
けれど誰も何も言わない
私はなんだかつまらなくなった
私と同い年くらいの女の子が
町を歩いていた
じっと見ていたら
目が合ったので
話しかけた
私を見てなんとも思わないの
私は彼女にそう尋ねた
彼女はにこりと笑いながら言った
だってみんな死んでいるのですから
(「空飛び死人」)
戻る 編 削 Point(5)