安東とロワ/楢山孝介
安東史継(ふみつぐ)(二十六歳)と
高柳ロワ(十六歳)は
バレエを通じて知り合った恋人同士
「ロミオとジュリエット」のように
悲しい物語は持たないけれど
「安東とロワ」と呼ばれている
なんて
続かない話を書きながら
書きつつ続きを考えながら
脈絡もなく
昔の詩はどうして定型や韻文に
重きを置いていたかという話を思い出していた
印刷技術がなかった、
あるいはまだ発達していなかった時代には
詩は読まれるものではなくて
口承されるものだったので
暗唱しやすいもの
謡われやすいものが
流行ったのだとか、残ったのだとか
印刷技術が発達してしまった
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