3度目の原爆2/円谷一
けた 黒い雨が風に流れて降ってきて水溜まりができそこに女性は頭を突っ込んで炎を消そうとしたが傷口に激痛が走ったのか 大きく絶叫しその場で息を引き取った 僕は瓦礫を退けて地面を素手で掘り起こし女性の遺体を埋めてあげた お祈りをして十字を切った
夜が更けても人々の絶叫と雨の激しさと爆発音と人間の肉色の空は途絶えることがなかった 僕にはもう君を探す力が無かった 圏外の携帯電話は青く細々と時刻を示していた 僕は携帯電話を叩きつけ 涙を流して原爆雲を仰いだ 街は砂となって消えるように存在感を失っていった あるのは虚無という名の現実だけ 被爆した人達は溶けた蝋人間が誰かにマリオネットで操られているみたいで呼吸もまならないまま徘徊していた そしてばたりと倒れ一人また一人と死んでいった 僕はこの地獄絵巻のような光景に身を置かれてどうすることもできなかった
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