亡霊と手紙/たけ いたけ
手紙を受け取った
封を切り
畳まれたわら半紙を開く
遠く隔たれた真夜中
何人もの死体を積み上げる
その羅列を殺すのだ
路上で横たわるネズミは
細菌という凶器と共に死んでいた
亡霊はいつも君の周りを囲んでいる
君よ
母よ
僕は何回も殺さなければならない
海よ
太陽よ
僕はいつ無数の殺害を終えるのか
亡霊は手紙を読み上げる
一向に聴こえない声で
手紙の彼方は晴れていたか
手紙の彼方は夏だったか
何も届かないまま
マッチ棒を組み上げる
油で満たして
いつでも燃え上がる用意をした
ネズミは何故死ななければならなかったか
何故無数の殺害がなされたか
亡霊が纏わり憑くのは何故か
その全てを
燃やす準備を終えた
(君の泣き声を聞きながら
僕は泣いて)
手紙を受け取った
封を切り
とめどなく亡霊が産まれる
部屋中に溢れかえる
息が詰まって
窒息する
のに死ねない
亡霊の息遣いが聞こえる
今
夕陽の音だけが聴こえる
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