甘く危険な香り(妖精篇)/渡 ひろこ
 


女はバックの中から華奢な細い指で
小さな透明の瓶を取り出した


「何・・?これ」


大人の親指程の大きさで
中にペパーミントグリーンの
液体が揺れていた


「これをどうしろっていうんだよ
    まさか毒じゃないだろうな」


冗談まじりに苦笑しながら言うと


「香りを嗅ぐだけでいいのよ」


と 女はいきなり僕の鼻先に
蓋を開けた小瓶を近づけた


少し甘くてスパイシーな香り・・・
そう、エタニティに似た香りだ
昔の彼女も確かこの香水をつけていたっけ


そんなことを考えているうちに
鼻腔をくすぐる香りと刺激から
身体の芯が疼くような感覚に捕われ


いつの間にか
気が遠くなっていきそうになる
目の前が見えない


(媚薬の一種か・・?)


そう頭をかすめた瞬間
身体がフワリと浮いて
異次元空間を漂う僕がいた


ゆっくり深呼吸して
目を開けると


謀略の成功に喜び
笑いながら飛び回る
小さな妖精を見た・・・・


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