高校にて/円谷一
嫌になれば辞めればいいと思っていた
太陽が雲間から光を射し込んできて
近くにある石狩川の流れが聞こえてきそうだった
空気が春の目覚めの匂いで満ちていて
そこから生物の存在を切に感じた
解けた山に降り積もった土壌は流れていって
日本海の上の不思議な森を成長させるだろう
そんな空想を馳せていると
急に晩冬の冷たい風が現実に引き戻して
距離をあけた校舎が肌寒そうに震えて立っていた
もう帰ろうと踵を返して歩きだそうとすると
旭川では珍しい色鮮やかな鶯が桜の枝に止まって
ピーチク ピーチクと赤ん坊のように鳴いていた
その様子が大変可愛らしく趣があったので
心を春色に染めて思わず顔が綻んだ
空全体が明るくなっていて
この世界を創りし者も喜んでいるのだろう
希望に満ちたこの陽気の中に
元気よく未来へ前進する自分が見えた
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