濾波/ねなぎ
感情には雑音が乗る
試験中の静けさに
胃が重たくなり
口中が乾いて
窓の風音と
斜め向かいの机の
名前が思い出せない
級友のシャーペンが
刻む音が気になり
目の前の紙には
集中出来ないでいる
手の中の紙は
高周波領域に
濾波がかけられていて
切り取られた世界は
歪んでしまっている
雑音こそが感情とも言える
視線に入り込んで来た
腕組みをしてうろつく
眼鏡と目が合うが
無視を決め込む事にして
じっとりとした
湿り気が苛立たせていた
息苦しさに目を瞑る
が視線だけは泳いで行く
握り締める程に重く
補正の必要があるならば
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