本屋にて/望月 ゆき
 
程近い小学校の
チャイムに助けられ
ぼくは レジに向かった

小銭を差し出すときになって
彼女が手にしていた本が
なんだったのか
気になってしかたない

出口でちょっと泣きそうになり
気がついた。
懐かしさを恋ととりちがえるほどに
偶然すらも
必然ととりちがえそうになるほどに
今のぼくは
さみしいのだ。

気がつけたら
途端に
なぜだかとても
イキワク(注:イキイキワクワクの短縮)な気持ちになり

下校途中の小学生の
ランドセルの波に
するすると乗りながら

今週末はサーフィンにでも
出かけよう、と
さっき買った雑誌を
脇にギュッと挟んで


小さな本屋にお尻をふった。

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