おっぱい/れつら
かったこととか 弟が生まれたときのこととか
ねえ きみがもし不治の病になってもおっぱいだけは切り落とさないで 音沙汰ないトゥデイから伝言 専門医の判断より愛らしい祈りを いのちを落とすとしても知るもんか 切るもんはもうないんだ バインダー閉じたまま開かなくなっていくのが昨日ってこと ってことはぼくらの閉じられた時間 みかんのふたつ転がる炬燵の上から 触れたなつかしいって気持ちは未来に 意外に明日のほうが昨日より懐かしいってそういうこと 挿入すると きみはいやがらなかったいつも ひとつも例外なんて無かったしあったとしたらそれが忘れたってことの正体 だしそんなの生涯思い出さない はかないちぶさの上で跳ねる指先とか 浮き足立った爪先 暗さに耐えかねてぼくときみ 速度じきに落ちて止まるよこの船は 孤独ではないかもしれない でもそれじゃいけない あぢけない行いのあいまに爪先をもういちど差し込んでちぶさにひかり つぶさに眺める 離れては近づく呼吸のたびに ちぶさはふたつその上で浅黒い花がふたつ
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