殺景/大覚アキラ
 
今からある情景の描写をするが
それはけっして
何かのメタファーではない
それを読んで
書かれていること以上のなにかを
読み取ろうとしたりすることは
まったくの時間の無駄である



燃えるワンピースをまとって
七回転する美しい娘
七回転し終わると美しい娘は
炎に包まれながら舞台の袖に消えていき
それと入れ替わりに
また別の美しい娘が現れ
次の七回転を披露する
娘たちはとてもよく訓練されているので
すべての七回転は同じように見えるが
当然ながらけっして同じではない
回転する速度も半径も軸のぶれ加減も
そしてなによりも
燃えているワンピースの柄が異なるのだ
だから
回転した時に描き出される色彩は
まったくそれぞれに異なり
見る者を飽きさせることなく
その心を惹きつけて止まないのだ



もう一度繰り返すが
これはけっして
何かのメタファーではない
これを読んで
書かれていること以上のなにかを
読み取ろうとしたりすることは
まったくの時間の無駄である
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