実験的感覚的その6/円谷一
 
に 君は僕のことを好きなんだなーと思う そして僕も君のことを愛していると思う
 やがて演奏が終わるとその余韻を確かめる為か両手を膝に置いて君はじっとしている 僕はそれを見て目を閉じて 停止した世界の音に耳を澄ます コーヒーの冷めていく音が聞こえてくる 時計の針に埃が落ちる音が聞こえる
 光で満たされた部屋は凍り付いているようにも見える 様々な思考をくぐり抜けた果てにこの景色が見える 僕はその距離を頭に思い浮かべて溜め息をつく 人間は実に色々なことを考えるものだ 思考の壁
 光だけが絶え間なく熱を帯びて部屋の中へ入ってきている 日溜まりが温い水溜まりのように感じた 天使がお漏らしをしたんだ 僕
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